第10回賃金・価格・利潤 カール・マルクス  横山雅彦訳 国民文庫=大月書店の学習 30ページ

 第10回賃金・価格・利潤 カール・マルクス

 横山雅彦訳 国民文庫=大月書店の学習


30ページ

賃金のことはまったくべっにしても、また賃金は不変だと仮定しても、流通させられる

諸商品の価値と数量ならびに総じて決済される金銭取引の額は日々変動していること、


銀行券の発行高は日々変動していること、なんら貨幣の媒介なしに、手形、小切手、帳簿上の信用貸し、手形交換所のたすけをかりておこなわれる支払の額は日々変動していること、


現実の金属通貨が必要なばあいでも、流通している鋳貨と、銀行の地下金庫に準備してあったり、ねたりしている鋳貨および金地金との割合は、日々変動していること、


国内流通が吸収する金地金の額と、国際流通のために国外におくられる金地金の額とは、日々変動していること、


がわかったであろう。


彼には、通貨が不変量だとする自分のドグマが、日常の動きとあいいれない、とんでもない誤りだということがわかったであろう。


彼は、通貨の諸法則にかんする彼の誤った考えを賃上げ反対の証拠につかうかわりに、こんなにもたえず変化している諸事情に通貨が適応できるようにする諸法則を研究したことであろう。


四 ( 需要と供給)

わがウェストン君は、反復は学問の母である repetitio est mater studiorum というラテ

ン語の諺を信じきり、そのため彼は、自分のもとのドグマをまたもや新しいかたちでくりかえし、賃金引上げの結果生じる通貨の逼迫は資本の減少をまねくだろう、などと言っている。


 通貨にかんする彼の奇妙な考えはもうかたづけたのだから、彼が通貨にかんして自分の想像にえがいた難関から生じると思いこんでいる想像上の諸結果にたちいることは、私はまったく無用なことだと考える。


 私は、さっそく、彼があんなに多くのちがったかたちをとってくりかえしている、いの同じドグマをもつとも簡単な理論にまとめあげる仕事にとりかかろう。


彼の主題のとりあつかいかたがどんなに無批判的であるかは、ひとつだけ指摘すれば明らか

になろう。彼は賃上げにたいして、または賃上げの結果としての高賃金にたいして、反対論をとなえる。


では、お聞きしよう。高賃金とはなにか、また低賃金とはなにか? と。


たとえばなぜ週五シリングでは低賃金となり、週二〇シリングでは高賃金となるのか?


五が二〇にくらべて低いなら、二〇は二00にくらべるともっともっと低い。


だれかが寒暖計について講義することになって、いきなり温度の高い低いについて熱弁をふるいはじめるとしたら、彼はひとになんの知識もさずけはしないであろう。


彼は、氷点の見つけかた、沸点の見つけかた、またこれらの基準点が、寒暖計の販売人や製造業者の気まぐれによってではなく、自然法則によって決められるしだいをまず私に話すべきである。


ところが賃金と利潤については、ウェストン君は、こうした基準点を経済法則からひきだすことに失敗しただけでなく、基準点をさがしてみる必要を感じさえもしなかった。


賃金は、その大きさを測定するひとつの基準とくらべて みてはじめて高いとか低いとかいえるものであることはわかりきったことであるにもかかわらず、彼は、 高い低いという卑俗な言い方を何か決まった意味を持つものとして受け入れて満足したのである。  


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